先日ようやく引越しができた。今まで住んでいた家の持ち主が家を売りたがっていることを聞いてから、1年近く経つ。実はそれをさかのぼること半年、家主の友人が私達親子を誘って、三峡へ家を見に行ったのだが、そのとき彼はすでに家主が家を売りたがっていることを知っていたようだ。
そんなこととは露知らぬ私は、確かにきちんと設計され、公共設備も整っていてきれいだが、もともと家を買うつもりもないし、たとえ買うにしても、何でわざわざあんな遠くて、交通の便の悪いところにしないといけないのかと思っていた。おまけに、ローンを組むために、とんでもない金額(あのあたりなら中古の家が買える以上の)を銀行に預金しろというから、馬鹿を言わないでと拒否した。もし、引越しすることになっても、もう少し通勤に便利なところにしたかった。何せ、三峡から会社まで1時間半かかるのだ。
それで立ち消えになったと思っていたのに、それから3ヶ月ほどして、友人はまた三峡を勧めてきた。自分で頭金を準備し、買ったらしい。この人はどこまでお人よしなのか、そこまで熱心に言うなら仕方ないと、私も観念した。
さて、次の段階が内装(装潢 ツァンフォァン)である。台湾の家には窓と床と壁と天井、キッチン、浴室、トイレ、ドアがあるだけなのだ。各人が好みで部屋の間取りを変え、家具を作りつけてもらう。
そこで私は娘と共に室内設計関係の雑誌を何冊か購入し、検討してみた結果、IKEAのシステム家具を壁につけることにした。
できるだけ壁面の棚に収納し、床に物を置かないようにしたかったのだ。そうでないと、今までの掃除はまず床に散乱しているものを片付けてからでないと、掃除機がかけられず、そうやってもあちこちにゴミが残ってすっきりしなかった。
それにこれなら後から変更や追加が可能で、気分やニーズに合わせて変更ができる。
それ以外は、広すぎるリビングをスライド式ドアで区切って、娘の部屋を一部屋作りたいという要求だけで、天井も配管むき出しでかまわないと考え、草案を作った。
ここで、友人が紹介するデザイナーのSさんが登場する。本来なら、内装業を営む娘の同級生の父親に見積り依頼をするつもりだったのだが、忙しくて手が回らないという。家主が急いでいるというので、仕方なくSさんに頼むことにした。また、友人の資金が足りないというので、我々が希望するとおりにしてもらうため、内装費用を負担することにした。
そこで私達の草案を見せ、実際に部屋へ足を運んで、希望を伝えると、3週間ほどたって、ようやく簡単な設計図(私が実際に部屋を測って書いたものより、いい加減で、縦横の直角もできていない)がでてきた。
それを見ながら我々の希望点を伝えると、また2~3週間ほどして、今度は見積書が出てきた。
値段がめちゃくちゃ高い。
天井は簡単にしたかったのに、我々が費用を負担するといったとたん、友人がややこしい希望を出してきた。今までお世話になってきたので仕方ない。
1.7mの幅で奥行きが50cmくらいのところに収納ケースを作るだけで45000元である。部屋の4箇所にIKEAの壁収納をつけてもらうのより、1万元も高いので、即却下。
できるだけコストを抑えたいと、間仕切りのガラスをプラスチックに変えたいというと、安っぽくなると、友人まで、口を揃えて反対するのでしぶしぶ承諾。
私が気にしていたのは、浴室と、部屋の窓が透明ガラスなので、丸見えになること。
窓に曇りガラス風シールを貼ってほしいと言ったのに、リストに入っていない。そこで、含まれているのかと聞くと大丈夫だと言う。
ベランダ全面に取り付けるアルミサッシはおおよその才数(1才は30cm四方)とその金額が8000元と書かれていて、実際に専門家に見積もってもらい、変更するとある(素人の私が測量したサイズはすでにその倍近くの才数があったので、疑問を呈すると、差はせいぜい1~2000元程度とのこと)。
もう1つ、友人が要求したのが天井収納である。キッチン横の3箇所、天井から四角い箱が下りてくるようにしたいという。あれば確かに便利だが、これだけで17000元もする。
我々が本来やりたかった壁収納は、IKEAで材料を注文しさえすれば、取り付け、組み立てを無料でしてくれるということになった。本来の費用は3000元だそうだが気前がいい(と思ったのが大間違い、Sさんは口だけ女であった)。
しかし内装の明細を出してほしいといったら、企業秘密で出せないという。明細が分からないと適正なのか判断できない。とにかく、要らないものを削って計算しなおした金額が一応の契約金額となった。
そしてその契約額の約一割ほどを手付金として払ったら、正式の契約書を作成するときた。
かなりの大金だが、翌日振り替え送金する約束をした。
それからまた2週間ほどして、ようやく契約書ができたという通知。1つ1つのステップにめちゃくちゃ時間がかかる。
少しでも早く進めたい友人がせかすので、とりあえずサインをする。
しかし、こういう契約で後から追加料金が発生するなどのトラブルがあることを知り、契約内容をもっときちんとしたものにしたいと提案し、国立大学法学部卒の娘の同僚に書いてもらった草案を出し、Sさんにもサインをもらった。しかし、結局はそれらの条項は完全に無視され、明細はでないし、きちんとした設計図も提出されず(寸法入りの設計図を出してくれたら費用を払うと言うと、なんと最初の提案に使った、線のゆがんだ図面を縮尺定規で測って、数字を入れたのには、びっくりした)、だらだらと遅れる一方。
11月末完成予定が、12月末、1月末、2月末、3月末、4月末と5ヶ月遅れ、おまけにその遅れの原因はこちらがクーラーなどの機種を早く決めなかったからだと言われる始末(クーラーは天井配管のことがあるので、デザイナーの知り合いに頼むほうがよいとお願いしていたのに、その知り合いと仲たがいをしたのは彼女自身)。
その間、私はSさんの言動がころころ変わるし、専門性、人間性に疑問が生じたので、何度も友人に彼女で本当に大丈夫なのかと念を押すのだが、他の場所のケースも彼女に依頼している友人は非常に彼女を信頼していて耳を貸さない。
結局、天井は友人の依頼したものとはかなり異なり(色はわざわざ色カードを渡され、薄いコーヒー色を指定したのに、なぜか自然色だと言って透明ニス仕上げ。しかし使用している木が安物で色がバラバラで汚い)、天井収納も、ただの四角い穴が2箇所だけ。娘の部屋は間仕切りの敷居をつけるためにどうしても木の床が必要(無料施工)といわれ、当初考えていた、リビングとの一体性がなくなってしまった。
またIKEAの家具をセメント壁に取り付けるのは難しいからできないと拒絶され(IKEAに知り合いがいて、5%引きになると言う話もウソ、取り付けても大丈夫と言っていたセメント壁は、実は一箇所石膏ボードで重いものは載せられない事が判明、また当日監督に来るはずが現れず、おまけにエアコンの配管の監督を私に押し付けた)、そしてベランダのアルミサッシの価格はなんと見積価格の2.5倍に跳ね上がった。
その上、私が一番希望していたガラスシールは、契約内容に書いてないから、業者を紹介する。勝手に見積ってもらえときた。
よくこれだけ嘘がつけるものだ。見積りの才数がこれだけ違って、専門家として、恥ずかしくないのだろうか?
呆れ果てた私は、少しでも早く打ち切りたいと思い、シールはDIYするので不用、ベランダのアルミサッシも不用、天井収納は穴だけだから、値引きという条件をつけ、その後の交渉を紹介者である友人に丸投げした。
ここにきてようやく友人もSさんのいい加減さを自覚したらしく、もう1つのケースも打ち切りにしたいので、このケースは値引きしないでそのまま終わらせたいといいだした。
何度も注意を促してきた私の意見を聞き入れなかった友人にも責任があると思うので、天井収納だけは絶対納得できないからと、値引き分は彼に負担してもらうことにし(そうでもしないと人のよすぎる彼の薬にならないし、ほとんどの内装は彼の要求したものの費用)、その代わり彼が勝手に追加したライトの費用やクーラーの室外機工事費用は私が負担することにした。
引越してからも、Sさんに預けた玄関の鍵とドアセキュリティカードは10日以上戻ってこなかったし、IKEAが取り付けた棚板のネジを外して、他の場所に流用していたり、クーラーの箱の中に、タバコの吸殻やビンロウなどのゴミを隠してあったりと、信じられない事実が次々に明らかになった。
このSさんの所属する設計事務所は桃園にあり、当初契約時の社名は全*工程といったが、2月末頃、彼女のご主人が責任者の芳*室*設計へ社名変更した。事前に連絡がなかったので、知らずに旧社名宛に送金したものを、郵便局まで訂正しにいく羽目になった(ありえないと思いませんか?)。
今は、1年近く続いた悪夢の日々がようやく終わろうとし、ほっとしているところだが、なんと最近また、近所でSさんに遭遇。新しいケースを受けたそうだ。どうしてこんな悪徳業者に仕事が回ってくるのか理解できない。新しい被害者が出ないことを希望するだけだ。